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「だから俺の私物が欲しい誰かが毎日何かしら盗っていくんだ。中等部に転校して来てすぐの頃はキャーキャー言ってる程度だったからよかったんだけど、さすがにこうも毎日物がなくなると何かしらの対策を立てないとどうしようもない」
「まさかそのために……」
「そうだよ。恋人がいれば諦めるかなって」
じゃあ何。有馬のファンが上履きやら制服やらを盗んでいて、対策のためにあたしを彼女に仕立てたと。
そんなの──。
「犯人見つけて謝らせるのが先でしょうがっ!」
「女の子がすることだ。それは無理だよ」
「はぁっ? 女だからって……」
「そうじゃなくて、一人じゃないから。犯人何十人もいるから。集団心理って恐ろしいよね。みんなやってるから大丈夫ってなるみたいだよ。しかも一応は悪いって思ってるのか、代わりに名無しの制服が置いてあった。靴箱にも、サイズ違いの上履きが代わりに入れてあったりね」
ほらと片手に持った制服はあきらかに女の子のシャツだった。これを有馬に着て欲しいってこと? 悪いと思っているなら盗らなきゃいいのに。
諦めたように言う有馬は、面倒そうではあるが特に思うことはなさそうだ。毎日そんなことがあったら、あたしなら絶対キレてる……。
「じゃあ、なんであたしなのよ。あたしだって有馬の制服とか盗ってるかもしれないじゃん」
「いや、それはない」
「なんで?」
「だって君、俺のことまったくタイプじゃないだろ?」
「うん」
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