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「あ~憧れの有馬柊くんの家に生まれてたら、もう超幸せなのに~」
慣れた道を駆け足で歩く。この辺でボディガードを撒いておかないと、あんな黒服の大男たちに毎日毎日どこへ行くにもついてこられたら息がつまる。
そりゃあ、何不自由なく暮らせる環境を与えてくれる両親には感謝している。
あたしの家はおじいちゃんが一番偉い。天羽グループの総帥で、銀行やらデパートやら商社やらとにかくいろいろな企業と統合を繰り返して大きくなった財閥だ。
まあ、一言で言うとめちゃくちゃお金持ちってやつ。
お父さんもお母さんも家の評判を気にして、あたしをできるお嬢様にしようとしてるけど、生まれついた性格はそうそう変えられるものじゃない。
見た目はまあ、多分どこからどう見てもお嬢様。お母さん譲りの美貌を引き継いだお陰で化粧いらず。本当は髪を短く切りたいのに、そんなことをしたらお母さんの前に東郷が倒れちゃう。だから一応我慢してる。
いつもの坂を駆け上がるとボロボロの看板に壁紙の剥がれかけた建物が見えてきた。目的地はもうすぐだ。
「こんにちはー!」
「お~蘭ちゃん! また来たのかい? ちょうど柊くんスパーリング中だよ」
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