お嬢様は王子様なんてだいきらい

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 それはわかるんだけど。秀嶺学園にはヒエラルキーがあって、ようは後ろ盾が強い人ほどヒエラルキーのトップにいられる。くだらないとは思うけどそれがこの狭い世界での現実。 「付き合ってたら何か問題でもありますか?」  呼び出しては見たものの、親へ告げ口でもされたらどうしようとあたしを呼び出した三人ともに焦りが見えた。  告げ口なんてするわけないのに。だからみんな同じ階級の人しか付き合えない。本当の友達なんてできるはずない。 「問題って……有馬さまはみんなのものよっ。誰か一人が抜け駆けしちゃいけないの」 「じゃあ有馬くんに言ったらどうです? あなたはみんなのものなので、特定の誰かとお付き合いするのはご遠慮くださいって」 「あなたふざけてるのっ?」  ヒュッと風を切るようにひとりの女子生徒の手が振り上がった。 「ふざけてるのはあんたらでしょうがっ!」  あたしは取り繕うのも忘れて女子生徒の腕を取った。こんなの避けるのなんて何でもないし、別に殴られてもよかった。それで彼女たちがスッキリするなら。でも、殴った方って意外と痛いんだよね。平手って結構力入れると手が真っ赤になるぐらい痛いの。 「まさか、あんたたち有馬の上履きとか制服とか盗った?」 「そ、そんなこと……」 「しませんわよ、ねぇ?」 「え、えぇ」  うわぁ、嘘つくの下手だなぁ。     
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