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「あ~気持ちいいっ!」
ポタポタと汗が額を流れ落ちた。手の甲で汗をぬぐっているとふと視線を感じてあたりを見回した。
「ん……?」
開けっ放しになっている鉄拳ジムの入り口付近で誰かが立っていた。どっかで見たことある……って、うちの学校の制服じゃん! ヤッバ!
慌てて手で顔を隠して指の隙間からチラリと覗き見ると、学校の男子になんかまったく興味のないあたしですら知っている顔がそこにあった。
「有馬……?」
柊くんと同じ名字だからってのも理由だけど、同じ学校内で彼──有馬柚斗を知らない生徒はいない。百八十はありそうな高い身長に色素の薄い茶色がかったサラサラヘア、日本人とは思えないモデルばりの整った顔立ち──そんな外見が王子様なんだって。
王子ってあれでしょ?
白馬に乗ってパッカパッカ……みんなバカなんじゃない? としかあたしには思えないけど、良家の子息や令嬢が通う秀嶺学園では校則が厳しく、格好いい男の子にキャーキャー言うぐらいしか楽しみがないってことはわかる。
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