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あたしみたいに放課後出歩いたりしてる子なんていないし、みんなバレエのレッスン、茶道に華道。よくそんなに習い事詰め込めるよねってぐらい毎日が忙しそう。車での送り迎えは当たり前だし、ボディガードがついてるのだって日常。良くも悪くも閉鎖的。
手で顔を隠したままもう一度入り口を見ると、そこに有馬の姿はなかった。
バラされたら……マズイよね。
「マジ……ヤバい」
あたしのこの趣味を両親が黙認してるのは、学校内であたしがお嬢様のフリをし続けているから。誰にも本当のあたしがこんなのだって知られてないから。
もしそれがバレたら──。
一・絶体絶命
「蘭……あなたには来週から秀嶺学園の寮に入ってもらいます。もう手続きは済ませたわ」
キタ────っ!
やたらと豪華なボタニカル柄の壁紙に電球が何百個もついたシャンデリア、五十人規模のパーティーが開けるぐらいは広さのある洋室で恐れていたことを告げられた。
高等部に進学してから数週間、変わらずに上手くやっていたつもりだったのに。
「お母さんっ! あたしは約束通り学校ではちゃんとお嬢様のフリをしてます! どうしてそんなオーボー!」
「黙りなさい! 聞きましたよ。あなた今日もバイオリンのレッスンとピアノのレッスンすっぽかしたでしょう! 東郷から報告が入ってます。いつかは天羽家の人間として自覚ができるかと思っていたのが甘かったわ」
どうやら有馬に見られてしまったことが理由ではないらしくて、ホッと息をつく。
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