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でもそういえば、昨日たしかに目が合ったはずなのに、有馬は何も言わないでいてくれたらしい。今日学校に来て噂になっていたらとかなり緊張していたのに、特に変わった様子は何もなかった。
王子様は中身もご立派でいらっしゃる……そんなことを思えばフンっと鼻がなった。
「天羽さん……ねえ、君天羽さんだよね。昨日会った……」
背後から肩をポンと叩かれて振り返れば、噂の有馬が立っていた。
「え、ええと……有馬くん。何のことかしら?」
「あれ、覚えてない? 昨日……」
「わーわーっ! ちょっとこっち来て!」
有馬の腕を無理やり引っ張り人の来ない校舎裏へと走った。生徒たちが下校する人通りの多い廊下で一体何を言ってくれんだ。
「はぁっ……はぁっ……疲れた……」
「大丈夫?」
さすが男子。体力はあるのか有馬は涼しい顔であたしに笑顔を向けていた。一瞬その顔に胸がキュッと締めつけられるような気がしたけど、絶対に気のせいだ。
「さっき……何かお話があるみたいだったから、ええと何かご用?」
「ははっ、真実を知っちゃうとその姿気持ちが悪いね。昨日おりゃーって言いながらサンドバッグ殴ってた人と同一人物には見えないよ」
「な、何のことかしら?」
「だからもういいって。写真もあるよ。見たい?」
この野郎。一体いつからあそこにいたんだ。
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