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お嬢様は王子様なんてだいきらい
プロローグ
「蘭っさま! お待ちくださいっ!」
「むーりー! あたしにお嬢様になれって言ったって無理なものは無理! 学校ではお嬢様のフリしてあげてるんだから、それでいいでしょ!」
追いかけてくる執事、東條を振り切ろうと百メートルはあろうかという家の廊下を全力疾走。けれど東條にとっては慣れたものなのか、走るのが得意なのかは知らないがすぐに追いつかれてしまう。
長い髪が邪魔くさい。
あたしは走りながら適当に髪を束ねて後ろで結んだ。
「あ~もう! ほんとイヤ!」
後ろから腕を掴まれそうになった瞬間、あたしは身を翻して東條をかわす。ヘヘンとドヤ顔でベッと舌をだせば、諦めたのかその場にたたずみ肩を震わせる男の姿があった。
「あなたは生まれも育ちも生粋のお嬢様なのですっ! 後生でございますからもう少しおしとやかに!」
泣きそうな東條の叫び声を尻目に、あたしは邸を抜け出した。
そんなの知るもんか。
何が生粋のお嬢様よ。なりたくてそうなったわけじゃないし、どうせだったらお嬢様じゃなくてプロボクサーの娘に生まれたかった。
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