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花火大会の当日、駅前は相変わらずの人混みで、花火会場までの道は行列が出来ていた。
俺たちはそれを横目に、遠藤が案内する廃ビルまで自転車で向かった。
空は暗くなりはじめ、打ち上げ時間が迫っていた。
通りの道を走っていると、周りの建物は空き部屋なのか、それともすでに終業したのか真っ暗だった。
そして、遠藤が止まったその先にはボロボロの廃ビルが建っていた。
外壁の塗装の一部は剥がれ落ちている。
一階はシャッターが閉まっていて、他の階の窓にはゴミが見えるし、ガラスには社名がそのまま残り、放置されている様だった。
俺たちは、廃ビルの脇に自転車を止めた。
そこには避難用の外階段があり、屋上まで続いていた。
外階段の入口には立入禁止と書かれたプレートと鎖で封鎖されているが、それ自体随分と昔につけられたのかひどく錆びていた。
遠藤がそこらに落ちていた石で思い切り鍵に叩きつけると、思いの外簡単に鍵は壊れた。
悪い事だとわかりつつ、俺たちは外階段を上りはじめた。
階段の鉄板も手すりも、かなり錆びているようだった。
誰かに見つからないかとハラハラしながら、俺たちは屋上を目指した。
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