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次の瞬間、遠藤が掴んでいた鉄柵の棒が外れ、遠藤の体が外に投げ出されそうになった。
咄嗟に藤堂が遠藤の左腕を掴んで引っ張り事なきを得た。
鉄柵の棒は、四階の踊り場に落ちた。
「誰かに腕を引っ張られた」
遠藤は動揺した様子で、床にへたれ込んだ。
「鉄柵が折れて落ちそうになった遠藤君の腕を、藤堂君が掴んで引っ張ってくれたんだよ」
「違う。藤堂が掴んだのは左だろ?引っ張られたのは右腕。下に引きずり落とされるかと思った」
空には盛大に花火と音が響き渡り、階段を上ってくる足音が消えた。
「音が消えたね」
結衣がそう言うと、床に置いたあったペットボトルが、中身を撒き散らしながらはじけ飛んだ。
俺たちはもう、花火どころではなかった。
「そろそろ帰った方がいいかもな」
藤堂がボソリと呟いた。
俺たちは、小さく何度も頷いた。
遠藤が一目散に、それから結衣、藤堂と続き階段を下りていった。
最後の花火が打ちあがり、俺は振り向いて空を見上げた。
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