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「やっぱりここにいたのね」
「何だ、日向か。どうした?」
「どうしたじゃない。お母さんが探してたよ? 買い物を頼んだのに返事がないって」
「そういえば、晩飯の材料を買ってきてくれってラインが入ってたな。まあ、そんなに焦らなくてもいいだろ。せっかくだから、日向も一曲聞いて行けよ。最高のライブ会場に観客が向日葵だけじゃ寂しいんだよ」
「その古臭いギターでカッコつけて、アーティスト気取り? それに、最高のライブ会場だなんて言って……ただの向日葵畑じゃないの」
「分かってないなあ。この場所は特別な場所なんだ。このギターをくれた伝説のアーティストが、学生時代に練習していたライブ会場なんだぞ」
「その伝説のアーティストも、今は田舎のフラワーショップの店長でしょ。ママの知り合いだから仲良くしてるけど、とても伝説を作ったような凄い人には見えないよ。ただの優しいおじさんだね」
「それが悔しいんだ。みんな分かってない。だから、俺が向日葵のミュージシャンを復活させる」
「葵がそんなだから、私もクラスメイトに変な目で見られるの。日向の双子のお兄ちゃんは中二病だって……」
「巻き込んで悪かったって、少しは思ってるよ。でも、俺は絶対に曲げないから」
「もう……分かったから、早く買い物に行きなさい。お母さんを怒らせたら夜ご飯抜きだよ」
「それは不味いな。仕方が無い、先に買い物へ行くか……あっ、そうだ」
「どうしたの?」
「なあ、向日葵の願いって知ってるか?」
~fin~
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