夏の音が聞こえる

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 高梨さんが帰った後、スマートフォンを確認すると高校の友達から返信が届いていた。 『返事が遅くなってすまん!久しぶりだな。もう俺たちのことなんか忘れて東京で楽しくやってると思ってたわ 笑 たまにはこっちに帰って来いよ。みんなお前に会いたがってるぞ』  なんだよ。なんなんだよ。俺はスマートフォンをぐっと握りしめた。  「僕は長く生きられなくていいのでどうか僕を人間にして下さい」俺はカナの言った言葉を思い出していた。短い命と引き換えに、人の姿になったお前に残された時間は、あとどれだけあったのだろう。全ては俺の気まぐれで、そこに深い意味なんかなかった。カナは手紙にこう書いていた。また、いつかの夏に会えたらいいですね、と。その「いつか」が来ることは、きっと永遠にないのだ。  俺は6畳一間の中心で、首の回らなくなった扇風機の風を浴びながら横になる。  さっきまで外でせわしなく鳴いていたセミの声は、もう聞こえなくなった。
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