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「次の曲は東京音頭です。皆様、どなた様も奮ってご参加下さい」
盆踊り会場にアナウンスが流れ、次の曲が始まった。すると、それを聞いたカナは突如、がばっと顔を上げた。
「これは東京音頭じゃないですか!」
「知ってるのか?」
「土の中で夏が来るたびに聞いてたんです!わぁ、これがあの音の正体だったんですね!僕、行ってきます!」
走りだそうとするカナの背中に向かって、俺は問いかけた。
「おい、お前盆踊り踊れるのか?」
「音しか知らないので全然わかりませんけど、ノリで踊ってきます!」
そう言い残して、カナは櫓を囲む人々の群れの中に混ざって行った。周りの人を見て、見よう見まねで盆踊りを踊るカナの動きはおかしかったけれど、とても楽しそうだった。
「ナツキさんも一緒に踊りましょうよ!」
いつもならうるさいとしか感じられない人々のざわめきも、今は心地良かった。軽快な三味線の音がいつまでも耳に残っていた。
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