夏の音が聞こえる

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 今朝も暑さで随分早い時間に目が覚めてしまった。首の下に敷いていた保冷剤はすっかりぬるくなってぐったりしている。この時期は目覚まし時計いらずだ。寝起きの頭で、もしかしたら昨日のことは夢だったのかもしれないと思い俺はベッドに目をやった。カナのいるはずのベッドはもぬけの殻だった。なんだやっぱり夢だったんじゃないか。  「おはようございますナツキさん。ラジオ体操に行きましょう!」  声の先には仁王立ちしたカナが立っていた。  小学生じゃあるまいし面倒臭いからいいよ、と断ったが「夏休みと言えばラジオ体操ですよ!ナツキさんが夏を満喫してくれないと僕は帰るに帰れないんですから!」と半ば強引に連れ出されてしまった。  公園には15人ほど参加者がいたがそのほとんどが小学生とご老人で若者は俺達だけだった。途中で抜ける人は一人もおらず、自分たちだけがラジオ体操第一で終えるのもなんだか気まずいので、やったことのないラジオ体操第二までやりきることになった。  「あら若いのに珍しいねぇ。兄弟かい?はいこれ参加賞」  最後まで残っていた俺達は、おばちゃんからスポーツドリンクを受け取った。  「また参加しなね」と、おばちゃんは朗らかに笑った。地域住民と交流したのは初めてだった。それにラジオ体操のおかげだろうか、心なしか頭も体もスッキリしている。参加賞がもらえるとは知らなかったのでなんだか得した気分だ。いつもなら部屋で昼過ぎまでグダグダしているが今日はまだまだ一日が始まったばかりって感じだ。早起きは三文の徳とはまさにこのことか。  ちなみに、俺が参加賞を受け取ってる間に、カナは知らないおばあちゃんからそうめんをもらっていた。カナは俺と違ってコミュニケーション能力が高すぎる。  「なんだか、得しちゃいましたね!」  そう言って、カナはニヤッと笑った。
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