下・委ねられた真実

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「その歴史って…何なんですか?」 「…詳しくは儂にもわからぬ。しかし、過去・現在・未来の歴史を繋ぐ存在なのかも知れぬが…その史実を忌む者には、この娘は脅威の対象であることは間違いない。だから、この地で息を潜めて暮らしてきたのだ」 「この子に…そんな危険が…」 「儂の素養をこの娘に費やすことに余生をかけてきたが、その役目も数日前に終えた。心残りは…この娘に多種族との融和の機会を与えてやれなかったことだが…いい仲間に巡り会えたな…」 少女はその言葉を耳にすると激昂して反論する。 「仲間なんていらないっ!私には大老がいればいい!それだけでいい!」 少女にとってこの竜は守りたい家族そのものであった。 レイアスは孤児院の生活から現在に至る様々な人との出会いが脳裏を駆け巡った。 「我が娘よ。もう儂の呪縛は解けた…外へと巣立つ時期が来たのだ。誉れ高き竜族として、守るために力を使うのだ。歴史を…種族を…自分自身を…そして、未来を」 「大老っ!!!」 「主の召喚術、もう少しばかり利用させてもらうぞ。せめてもの罪滅ぼしだ…」 竜は両翼を大きく広げ立ち上がった。 そして少女を足に乗せると飛び立つ姿勢を取り、レイアスの顔をじっと見つめた。 「主よ。この娘の名はーーー」 満点の星空に高く飛翔した竜は大気を轟かせる咆哮をし間も無く、イスリーダに雲を呼び雨を降らせた。 「レイアスっ!!」 「レイアスくん!!」 そこにやって来たのはイリスとエストであった。 息を切らしながらエストは驚愕していた。 辺りに散らばる鎮魂晶は、雨に打たれると眩く光を帯び瞬く間に元の生命の姿に戻る。 多くはぐったりと横たわり、その中にはイスリーダ兵の姿もあった。 「これは…一体どういう状態なんだ…」 「ロコンっ!!目を開けて!!」 イリスは地面に横たわるコロンを抱きかかえ声を荒げる。 駆け寄るレイアスと心配そうに見つめるしかないエスト。 「コロンは…俺たちをかばって…ごめんな…」 「と、とにかくレイグラードまで急いで戻りましょう!このまま雨が強まれば、体力が奪われる一方だ」 「コロン…!コロンっ!」 イリスの目から涙が溢れる。 その涙はまるで流星のように頬を伝った。 「あれ…もう雨が…止んだ?」 先ほどまで覆っていた曇天は煙のように消え去っていた。 葉を滴る露は、まるで星空を射映したようにキラキラと輝く。
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