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「それが…言葉を喋るっていう竜…?」
「…どうかしら、昔のことは忘れちゃったわ」
「そうか…で、その男は今なにしてるんだ?」
そこに割って入るのはソフィとイリスだった。
「それ私も気になる!恋人?それとも、いい仲で終わっちゃった人?」
「気になる…!」
「うふふ…それは女の子だけの時にでもお話しましょ♪」
「まったく女って生き物は…」
「それよりソフィ。約束のもの、持ってきたわよ」
レムはオバナをソフィに渡した。
「ありがとう!助かる!じゃ、すぐに準備するね!」
「レムさん…あの…」
「どうしたの?イリスちゃん」
「媚薬の作り方を教えてください…」
「あー、あの薬のことね。いいわよ、今度お店にいらっしゃい♪」
「ま、まったく女って生き物は…!!」
呆れかえるギリアム。
自分の夢を叶えるために他人を巻き添えにしてしまったのではないか、そんな彼の不安から始まり、自分が作ろうとしていたのは何かの生命を犠牲にして作り出す武具だったという事実に終わる。
しかし、レムが楽しそうにしているだけですでに満足だった。
「はい!1日遅れたけど、山猫亭スペシャルお月見団子っ」
ソフィはオバナを添えた団子を各テーブルに運ぶ。
「おう!美味しいそうだな!」
「丸くって可愛い…ガナンさんの頭みたい」
「みゅう♪」
「あはははは、可愛いだって!あはははは」
「おい誰だ!今ハゲって言ったやつは!?」
「レイアスだ」
「えぇえええ、俺は何も言ってないですよ!」
「うふふふ♪」
「つべこべ言わずに全部食べなさいよ」
料理を一通り終えたソフィはテーブルの空になった食器を厨房に運ぶ。
店の端の席。
そこには空になったティーカップがまだ片付けられずに置かれたままであった。
賑わう声はイスリーダ帝国の平和を象徴する。
雲ひとつない満点の星空。
月を横切る緑衣の魔女はそっと呟く。
「傍観者の竜よ、長き勤めの果てに何を見た…さぁ、今は安らかに眠れ」
END
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