下・委ねられた真実

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「あはは…コロンとは付き合いが長いからかな…」 「みゅぅ?♪」 「…大老みたいだ…」 「大老って…あの竜のことか?」 「…」 竜の骸を見つめるレイアスと少女。 「なぁ…!俺はレイアスって言うんだ!冒険家だ!...まだまだ新米だけど」 「みゅう!」 「んで、こいつはコロン!多分、精霊族だと思うんだけどよく分からない」 「みゅ!みゅ!」 「あぁ、悪かったよ…。…よかったら君の名前を教えてくれないか…」 少女は少し考えたように口を開く。 「…名前は…人族に名乗る名前なんてない…」 「そうか…無理に聞いて悪かったな…ごめん」 「…大老は言った。種族は言語の隔たりなくとも共存できると…」 「えっ…?」 「私は他の種族のことがわからない…言葉もわからない…人族のことがわからない…」 力なく発する言葉は、あの凄まじい戦闘していた少女とは別のようだった。 「お前たち人族は…まるで心の中を覗いてるように行動すると思えば、混血というだけで迫害する…」 「混血って…あの兵士が言ってた…」 「私の中には精霊族の血が混ざっている…その力で大老を復活させるつもりだ…」 「精霊族…復活…」 「だから…邪魔しないで。レイアス。コロン」 「っ…」 「みゅぅ…」 少女は月を覆う雲がなくなったのを見て、静かに詠唱する。 鎮魂晶の輝きはそれに呼応するように光を強く放つ。 少女は合唱した両手を月へと掲げる。 すると、一斉に光は竜へと注がれる。 吹雪の如くけたたましいうねり声と冷気。 その竜はゆっくりと立ち上がり、翼を広げた。 「これが…精霊族の力…!」 「…大老…!」 念願の再開を果たした少女はその場で膝を付き、竜を見上げる。 「…大老。…大老?」 次の瞬間であった。 「危ないっ!!」 その竜は少女を喰らおうとする。 レイアスは少女の衣服を引っ張り、竜の攻撃を回避させる。 「離してっ!レイアスお願い!」 「ちょっと待ってくれ!君の言ってた大老って…こんなに乱暴なのか…!?」 「…多分、鎮魂晶…生命の力が足りないんだ…」 思案するレイアスたちを竜は待たない。 鋭い爪を持つ前足で大地を切り裂く。 負傷しながらも的確に避けるレイアス。 少女が示唆するように、その竜の行動にはどこか欠陥があるようであった。 「…私が…」 少女はレイアスを突き飛ばす。 竜は大きな口を開け、少女を目がけて首を伸ばす。 少女は抵抗しなかった。 「…っ」
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