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少女の目に映るのはレイアスの背中だった。
剣を突き立て、全身の力を竜への抵抗に注ぐレイアス。
「ぐぐぐ…君が…君が食われてどうなるんだ!例え、完全に復活しても…大事な家族を食べたと知ったら…!」
「…レイアス…」
竜は大きく首を振り、レイアスを吹き飛ばす。
すると大きな翼を上下に羽ばたかせ、口に力を集中させる挙動を取る。
レイアスはそれが波動砲であることを察すると奥義の構えに移る。
「…決めてやる!シャイニング…っ」
「…待って!!」
竜とレイアスの間に割って入り、制止する。
「レイアス!死霊術は何度でも使える!でも、それには大老の体が必要なの!だから、傷つけないで…!」
「…っ!くそっ!」
粉塵が立ち込める。
それは竜が宙を舞ったことを意味する。
そして、蓄えた力を波動に変えて放つ竜。
身を呈し、自身の剣一本で少女を守る。
「ぐ…っ!!!」
その波動は威力だけではなく、レイアスと少女の生命力を奪っていく。
波動が途切れた時、片膝をつくレイアス。
「…逃げろっ」
その言葉に頷き、少女は竜の注意を逸らした。
しかし、猛攻は続く。
竜は間髪入れず、第二波の用意をするかのように口に力を集中させる。
「…しまった…!」
少女は両手を広げて、竜に語りかける。
「大老っ!目を覚ましてください…!私は決して死にません!だから、死ぬまで側に…側にいてください…大老のいない世界では死んだも同然です!私を一人にしないで…お願いっ」
波動。
その照準は少女に向けられていた。
まぶたを閉じる少女。
「みゅぅ?!!!」
おぞましい波動弾は森の木々をなぎ倒していた。
大地をえぐったような跡には、無残なコロンの体が転がっていた。
「…!!」
波動が少女を狙う寸前、コロンは少女を突き飛ばし身代わりになったのだ。
その光景を見た少女は膝から崩れ落ちる。
「コロンーーーーーーっ!!」
無慈悲な竜は先ほどよりも高く舞い上がり、口に力を集中させる。
レイアスは竜に剣を向け、少女に語りかける。
「これが君の家族でも…俺の仲間を…他の生命を…犠牲にするなら、俺は戦う!」
「……」
「本当にこれが君の家族なのか?!君が守りたかったものなのか?!」
「…!」
「戦うんだ!目を背けるな!」
「…ごめんね…」
息を飲むレイアス。
そして、少女は涙を流しながら立ち上がる。
「ごめんね…コロン…ごめんなさい…大老っ!」
詠唱を唱える少女。
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