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「ま、まぁ、当然よね!さ、そろそろ開店準備しなきゃ…街もこんな様子だし手が空いたら紅茶のケーキでも作ってみようなか?」
「…美味しいです…」
少女は大粒の涙を流していた。
「な、何よ…美味しいのは嬉しいけど…べっ別に泣かなくてもいいでしょう!!」
「まぁまぁ…ソフィさんの料理はそれほど美味しいってことですよ」
ツンケンしたソフィの表情はエストの一言でさらに赤面していく。
「わっ、わかったわよ!せっかく作ったんだから残さず食べなさいよ!」
「あはは…ご馳走になります」
そう言うとソフィは厨房の奥へ隠れるように行ってしまった。
夢中で食べ続けていたコロンは野苺のマカロンを少女の皿に運ぶ。
それを見たイリスも同じようにマカロンを皿に乗せる。
「これも…食べて」
「みゅぅみゅう♪」
マカロンを見つめながらも決して手をつけようとはしない少女。
少女の素性はおろか、事情も知らないエストは空気を読む。
「さぁ皆さん。これを頂いたら一度王宮の方に出向いて見ましょう。レイアスくんもそこにいるのでしょう?」
「えぇ…たぶん…」
紅茶は冷めようとしていた頃には、店内は複数の客の姿。
しかし、次の瞬間であった。
店のドアが開くと同時に男の放った言葉は周囲を困惑させる。
「武装した男が王宮前で暴れてやがる!みんな外を出るんじゃないぞ!」
混乱。客の中には急いで店を出ようとする者もいた。
「おい!もっと詳しく話してくれ」
「わからないが危険な状況なのは確かだから迂闊に外には出ないほうがいい!」
「そんな…」
「今は軍服を着た男とロイさんが戦ってる」
イリスはその単語を聞くや否や立ち上がった。
客たちと男の会話は続く。
「帝国の軍部と騎士団…こりゃ内戦でも始まったのかよ…」
「わからねぇけど…武器を持って市民たちも手を出せない状況だ…ったく何が起こってるんだ」
「あれから何も説明はないのか?!」
「あぁ、荷車引いた兵士たちが北東の森へ向かってから何もだ…」
少女の手はピタリと止まった。
そして、エストは男に駆け寄り問いかける。
「他に情報は…?」
「悪いがエストちゃん、何もねぇよ。ガナンさん達も見てないし…」
「そうですか。ありがとうございます。少し私は様子を見てくるので皆さんは表に出ないように心がけてください」
「…私も!レイアスがいるかもしれない!」
店を出ようとするエストを追いかけるイリス。
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