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それに続くように少女も立ち上がり、男の方に駆け寄った。
「…森へはここからどうのように行けばいいのですか…?」
「みゅぅ…?」
レイグラードを覆う雲は分厚く、曇天が広がりはじめた。
ーイスリーダ帝国、謁見室ー
レイアスが王宮の門前で市民たちの強行に対し、決死の説得を試みている頃。
整列した帝国騎士が等間隔で並ぶ謁見室。
そこには皇帝皇女の前に跪くロイがいた。
「レムの推測では今晩か…しかし、いつからそのような無頼の輩が潜伏していたのだ…」
「わかりませんが、ラガンでの事件は少なくとも4ヶ月前とのことです」
「ファメルの斥候という線は無いのですか?」
「目的が掴めない以上、今の所は何とも言えません」
「そうか…向こうは何と?」
「ファメルの宿老・ゼイオルグ氏は魔族の可能性を示唆しておりました。それを踏まえ、ファメル国政府は容疑者2人の身柄引き渡しと盗品の返還を要求する準備をしていると…」
「魔族…か」
物々しい会話が続く。
疑惑と脅威に皇帝は長考する。
その長引く時間にロイは焦りを感じていた。
「皇帝陛下っ…!」
「あぁ、わかっておる…しかし」
「市民たちは暴動を起こす寸前です。彼らが行動に移す前に軍部独断の強制連行された3名の釈放が先決かと…」
「だが、釈放すれば市民は連行した理由を問うぞ。この事件が公になれば、この鉱石がイスリーダ帝国の脅威になること。そして、容疑者の一人を野放しにすることにはならないか」
「彼らは私の信頼する仲間たちです。まずは容疑者ノモリ=ギラウの身柄確保、加えて目的および共謀者の情報を引き出すための尋問を執行するべきです」
「ロイよ…お前のことは信頼しておる…だが、お前の信頼だけでは不十分なのだ。3名…特に元イスリーダ帝国軍の錬金術師レムと武具の製造に長けておる鍛治職人ギリアムの2名は、これらの鉱石を使い国を転覆する力を持っているのだろう。彼らの無実はお前の信頼では証明しきれぬ」
「しかし!3人は国に忠義を誓い、今までで我々に協力しているのも事実です!レムも一切の抵抗なく王宮に馳せた」
「…あぁ、定刻に姿を見せずにな。それにギリアム氏も連行の際は随分と抵抗したと聞くぞ」
「っ!!そ、それには彼の…」
常に冷静であったロイは焦燥する。
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