中・闇に消えた真実

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レムはレイアス達を追うために森へ向かい、ギリアムは軍のために武具を大量生産しない主義であることを弁解しても、現状に対する判断材料には欠けることを知っていたのだ。 それを見た皇女はロイへ言葉をかける。 「落ち着きなさい、ロイ。民を信じましょう。今、軍部の人事資料を参照しているところです。疑いある人物の特定を待ちます。今晩に間に合うように…その”死霊術”が使えるという術者があらわれる前に」 「…っ!」 差し迫った状況。 その状況を打破する朗報が舞い込む。 「皇帝陛下っ!ご報告いたします!ノモリ=ギラウ氏、おそらく偽名と思われますが、彼の渡航記録と全く同時期にイスリーダを離れている一人の軍技術者を特定いたしました」 ー王宮内、軍事会議室ー 同刻。 レイアスが王宮の門前で市民たちの強行に対し、決死の説得を試みている頃。 静まり返る場内はノモリ博士の発言に注目が集まる。 「1つは…鎮魂晶の別の運用方法と…もう一つは…このイスリーダ帝国の領地にいるとされるあらゆる種族の言語を操る竜の存在についてです」 「…!!」 驚きを隠せないレム。 また、将官も同じように驚き、ノモリ博士に訊く。 「博士…それは私も初耳なんだが…」 「これは私の独自の調査です」 緊張が走る中、ざわめく場内。 誰一人として回答するものはいなかった。 「ほぅ…ご存知ないですか…錬金術師さん」 まるで見透かしたかのようにレムを名指しするノモリ博士。 沈黙するレム。 しかし、それはノモリ博士の策略通りの反応になってしまう。 「…」 「…私の調べるところによると、占星術に関する文献の中に十五夜と呼ばれる時期に特定の種族だけが扱える秘儀があると…」 「博士、これは何の話かね?」 「少しだけお付き合いください」 するとノモリ博士はレムに詰め寄りながら語りはじめる。 「…お詳しくありませんか?占星術」 「…」 「まぁ、いいでしょう。その特定の種族が持つ秘儀は、十五夜の月に祈りを捧げると死者の声を聞くことができる、とされているのです。まるで錬金術における死者蘇生です…」 「…」 「博士っ!いい加減にしないか!」 「お戯れを…少し静かにしていてください」 「ぬぅ…!!」 口調の荒くなる将官を圧倒するノモリ博士の狂気に満ちた表情。 それは殺意にも似た禍々しい気を放ち、レムを更に尋問する。
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