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「レイアスならたった今、王宮に…」
「こんな時に王宮に入れてもらえるわけないじゃない…あの馬鹿」
「…」
「あなたを一人残して何やってるんだか…今日はペットと一緒じゃないのね。あのふわふわの」
「あれ…コロン?」
イリスは辺りを見回し、少女の寝ている部屋のドアが少し開いてることに気づく。
足音を殺すようにドアに近づき部屋を覗く。
「みゅ?」
「…コロン」
そこにはコロンとベッドから半身を起こしている少女の姿があった。
その光景をイリスの後ろから乗り出して見るソフィ。
「みゅぅ?」
「…」
「…」
「あら、新人の冒険家?」
その問いかけに誰も声を出さなかった。
「…」
「…」
「あ?もう!街が大変だって時にうだうだしちゃって!」
「…」
「…」
「元気の出る料理でも作ってあげるから、あんた達ついて来なさい」
「みゅぅ?♪」
そういうとソフィはイリスと少女の腕を強引に引っ張り、自身の店に連れていく。
外を出ると普通の事態ではないことをイリスは再確認する。
ソフィに連れながらも断片的に耳にする街の声は混乱そのものであった。
「おい聞いたか?クーデターを起こすつもりらしいぞ」
「錬金屋の人、捕まったって本当?怪しいとは思ってたけどまさかね」
「ねぇママ、何が起こってるの?」
「あのやり方は間違ってる!幾ら何でも強引だろ」
「魔女らしいわよ、あの女の人!この前空を飛んでるのを見たわ」
「国を出る用意をした方がいいのかな」
その状況を表すかのようにイスリーダの空は陰りはじめる。
ー王宮内、軍事会議室ー
そこではレムを中心に多くのイスリーダ帝国の要人が取り囲んでいた。
その傍らには手枷をつけられたギリアムと腕を組み静かにレムを見守るガナンも姿もあった。
静粛な空気の中、軍部の将官の一人がレムへ尋問する。
「本題は謎の鉱石に関する錬金術師としての見解である。処遇についてはその後、議論する。異論はあるか?」
「いいえ…」
「では、始めよう」
レムは鉱石についての持ちうる情報をすべて開示した。
この鉱石は鎮魂晶と呼ばれる力を宿した結晶の一種である可能性が高いこと。
それを作り出せるのは竜族であること。
また、鎮魂晶に宿った力は竜の涙によって、肉体を取り戻し活動を再開すること。
兵器・武器への応用や錬金術によって力を凝縮させたり、召喚石に似た使い方も出来る可能性が高いこと。
しかし、それらには竜の涙が必要であること。
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