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心配そうに少女を見つめるイリスはある料理を思い出した。
「あっ…ソフィさん。野苺のマカロンってありますか…?」
「みゅみゅみゅー♪」
「…あるけど?」
不機嫌なソフィはふてぶてしく答える。
イリスの提案にここぞとばかりに場の空気を読み便乗するエスト。
「い、いいですね!私、実はこういうのに憧れてたんですっ!女同士で甘いものを囲みながら談笑するの」
「まぁ、いいわ。この料理はあの馬鹿にでも食べさせるから。用意するから、ちょっと待ってて」
「い、いやー!野苺のマカロニなんて初めてですよ!た、楽しみだな…はぁ」
「エストさん。マカロンです」
「みゅぅ!」
「…マカロンって…何ですか?」
「わかりません」
「みゅ!」
「わからないものをこれから食べるのか…」
そう不安がるエストはティーカップを持ち上げる時、あることに気がついた。
「ソフィさん!」
「何ーっ?」
「皆さんに紅茶を淹れてくださいませんか?」
「あいよー」
少女が一点を見つめる視線の先はエストの紅茶だった。
しばらくすると、先ほどの豪快な料理と違って、繊細で可愛らしく盛り付けのされた野苺のマカロンと上品なティーカップがテーブル並を彩る。
マスカットのような甘く爽やかな香りの湯気が出ているティーポットを持つソフィ。
それを全員のティーカップに注ぐ。
「わぁ…美味しそう!あっ、コロン!」
「みゅ?♪」
コロンは誰よりも早くマカロンを口にするとふわふわと嬉しそうに揺れた。
「まっ!料理を食べてこれくらい喜んでくれたら料理人冥利に尽きるわね!...じーっ」
ソフィは注がれた紅茶を見つめる少女を凝視していた。
同時にエストも得体の知れないマカロンを凝視すると、恐る恐る口に運んだ。
「んっ!んんんっ!ソフィさん!これは何ですかっ!」
「何って…マカロンだけど…」
「すごい美味しいじゃないですか!紅茶に合う!さすがソフィさんっ」
「紅茶を出せって言ったのはエストでしょ…まぁ。私にかかればこんなものね」
そう言いながらもソフィは少女を横目で見る。
少女はカップに口を近づけて紅茶をすすっていた。
「…」
「…ど、どうよ…」
心配そうに少女の様子を伺うのはソフィだけではなかった。
「…美味しい…です」
少女の一言に全員が胸をなで下ろす。
その中で一番安堵したのはソフィなのかもしれない。
料理人としてのプライドが彼女にはあったのだろう。
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