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「あぁ…、残念ながら良い待遇は期待できないが、尽力はする」
「待ってくれ!ロイ!レムさんが行けなかったのには訳が…!」
「お前がそう弁解してどうなる?レムの逃亡を手助けしたとも思われ兼ねないどころか、そうなればお前もレムも拘束されるだけだ。もっともレムがレイアスの証言を肯定するとは思えないが…」
「女の気持ちを邪推するのは頂けないわね…ん?」
レムは何かの気配を感じながら、こう続けた。
「同情して私も邪推すると、この鉱石は鎮魂晶の一種であること。錬金術とは異なる術で生物の生命力を力として宿す石、召喚石に構造が似ているけど少し違うわね。この生命力を結集させて使えば死者だって甦らせることは可能かもしれない」
「レムさん?」
「私も錬金術を極めて、死者を蘇生させる錬成へとたどり着いた。でもね…」
ロイも何かを察したようだった。
「死んだ者を生き返らせるなんて、術者のエゴなのよ。それと同時に尊い命全てに蘇生を試みるなんて生命に対する冒涜なの。よーく聞いてね。守るために力を使いなさい。そして、理から目を背けてはいけない」
「そういうことか…。大きな賭けだな」
「ど、どういうことだよ!!説明しろっ、ロイ!」
「来たるタイミングでな…」
「信じていいんだな…」
レイアスは親友であるロイの目をじっと見つめた。
レイアスの疑問が一つ増え問答をする隙を与えず、大勢の足音が森の奥から聞こえてくる。
現れたのはイスリーダ帝国の兵士達であった。
それを視認するや否やロイは開口一番に兵に言った。
「先刻、容疑者を確保した。それと民間人3名を救出。怪我もしているようだ。早急に手当と食糧は与えてくれ。俺は先に戻り、容疑者を連行する」
「了解した…あの、民間人?あと2人は?」
「そこの草むらだ」
全てを見透かしたかのようにロイの指差すところを兵士が草をかき分ける。
そこにはイリスとコロン、そしてイリスの膝で疲弊した少女の姿があった。
「レイアス…」
「みゅぅ…」
ロイによって連行されるレムの姿をレイアスはただ呆然と見つめるしかなかった。
そんなレイアス達に兵士が駆け寄る。
「君たち大丈夫だったかい?向こうの荷台に衛生兵と糧食を急いで用意する」
「…」
「レイアス!」
「あっ、すみません…俺は大丈夫です。彼女たちを…先にお願いします」
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