0人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかりました。一緒に居られなくてすみません…」
「うふふ。ありがとう」
すると森の奥へレムの姿は消えていった。
ー宵の口、森林中腹部ー
地面にひれ伏せたままの少女。その肩は微かに呼吸しているように見える。
星空と同じように辺りに散らばる輝く鉱石。
疑問が解消されないまま、時間だけが流れていく。
「ねぇ、レイアス」
「どうかしたかい?」
「この人、”邪魔させない”ってずっと言ってた」
「それ俺も気になってた。最初は俺たちが何か悪いことしちゃったのかなって思ってた。いや…今でもそんな気がしてるんだ」
「うん」
「でも!俺たちを襲ったのは確かだ。…イリス、危険な目に合わせちゃってごめん…」
「ううん。私も守られるばっかりで…」
「そんなことないよ!俺たちは」
会話を中断するかのように少女の体が少し動く。
すぐに立ち上がり剣を構えるレイアス。
「イリス!離れてて!」
「うん!」
「私は…死なない…邪魔はさせない…」
風前の灯火が如くそう言うと、少女は森の奥に顔を向けた。
「教えてくれ。俺たちが何かしたなら謝る。だから…教えてくれ」
レイアスの言葉を聞いたのか、少女は歯を食いしばりながら仰向けに体勢を動かした。
そして、少女が涙を流していることを知る。
「邪魔しないでくれ…私の…私の大切な…家族なんだ…」
「家族…」
「家族を守るため…なのに…邪魔をする…」
レイアスが剣を向けた理由と少女が武器を振るった理由は同じであった。
守るために戦う。
そして、その敗者の守ろうしたものが今、消えようとしているのである。
「イリス…」
「レイアス?」
「すぐに戻る。やっぱりレムさんに聞かないと分からない。また君を危険な目に合わせようとしている。俺は…」
「私は大丈夫。私はレイアスを信じる」
「…ありがとう」
レイアスはレムが向かった方角へと走る。
その姿を目で追う少女は悲愴そのものであった。
「生まれた故郷の民からも…あらゆる種族からも迫害を受け…次は家族…」
「…」
「…おしまいだ…もう…殺してくれ…生きていても…死ぬより辛い…っ!!」
「大丈夫、あなたは死なない。レイアスを信じて」
「みゅう…」
以降、彼女は目を閉じ、そのまま声を出すことなく静寂だけが空間を支配しようとしていた。
「みゅぅ!!」
静寂の異変に気付いたのはコロンだった。
「どうしたの?コロン」
「みゅう!!」
最初のコメントを投稿しよう!