上・疑念だらけの真実

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「…足音!誰か来る…隠れなきゃ…コロン!手伝って!」 「みゅぅ?!」 イリスとコロンは少女を草陰に隠し、その気配を来るのを待った。 ーイスリーダ帝国、真夜中のレイグラード鍛冶屋ー 激昂しているギリアムを宥めるガナンの姿があった。 「だから!何回も言ってるだろ!俺はやらねぇよ!」 「ギリアム、少し落ち着け!」 そこにはイスリーダの兵長と部下数名が物々しい武装していた。 「営業停止処分も辞さないと…」 「あぁ、構わねぇよ!お前らなんか鈍の剣…いや木の枝で上等だろ!」 「お前っ!イスリーダ帝国に叛逆するつもりか!?」 「おいおい、ギリアムもあんた達も売り言葉に買い言葉で話するんじゃない!」 「ギルドのガナンだな。お前もその男に加勢するなら同罪だぞ!」 「なんだと!こいつと俺が軍のために武器を作ることは関係ねぇだろ!」 「おい、と、とりあえずロイを呼んでくれないか?」 「ロイは今、手が離せない案件があってな。とりあえず連行しろ」 真夜中の事件であった。 強制連行されるギリアムとその友でありギルドマスターのガナン。 その二人に駆け寄るシェフの姿がそこにはあった。 「ガナンさんっ!ギリアムさんっ!」 「おぉ、ソフィ!俺とギリアムなら大丈夫だ。それより…」 「喋らず歩け!」 「ロイが戻ってきたら言ってくれ!”説明しろ”ってな!よろしく頼むぞー」 ガナンは山猫亭のシェフであるソフィに言伝を預け、連行されてしまった。 「一体、どうなってんのよ…レイアス達は…?あ、それよりエストにも伝えなくちゃ…!」 その事件は朝を待たずして街中へ広まって行くことになる。 ー同刻の闇夜、森林最深部ー 空の星が見えなくなるくらい辺りを眩く照らす鉱石の山。 そこにレムは独り立っていた。 その眼前には大きな生き物の骸。 「こんなに明るくちゃ…あの世でも目が醒めちゃいそうね…」 レムは杖を掲げた。 自身の魔法で生成した紋章を鉱石の上に描くと、腰からガラスボトルを取り出し2,3滴、鉱石に垂らす。 すると、鉱石は激しく光り輝いた後、ミキュオンに変化した。 「キュ…?」 「ごめんなさいね。あなたは雪原の子かしら。さぁ、元いた棲家にお戻り」 「キュ!」 ミキュオンは元気そうに森の外へと続く道を進んで行った。 「レムさん…これは…」 ミキュオンとすれ違うレイアスの率直な疑問だった。 「あら、約束を破るなんて男としてサイテーね」
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