4.桜が散って、ツツジが咲き始め

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4.桜が散って、ツツジが咲き始め

 前野曜子が訪ねて来たのが、桜が咲き始めた頃。花はツツジに変わろうとしているのに、彼女からの連絡は無かった。俺は、スマホの電話帳で検索してこちらから掛けようと思ったが、前野でも曜子でもデータは入っていなかった。確か、口頭で番号を聞いてその場で入力したはずだったが。最近の俺は、こういうことが多い。仕方がないので、彼女の言っていたレコード会社のプロデューサーに電話して、彼女の携帯番号を教えてもらった。ところが、何回電話しても出て来ない。  なんか忙しいのかな、と思って放っておいたら、なんとシュウちゃんから電話が来た。  「真知さん、お久しぶりです。」  「おぅ!シュウちゃん。本当にシュウちゃんかい?」  「やだな。まだ呆けるには早いですよ。」  「そうだな、ごめん。そいで、今日は?」  「そうそう、前野曜子に何回か電話されました?」  「あぁ、したよ。作詞してくれって頼まれたから、どうなったかと思って。」  「そうだったんですか?おかしいなぁ。彼女、真知先生から何の電話かしらって、私のところに照会してきたんですよ。」  「そうかい。なんか話が違ってるな。まぁ、兎に角3人で会うか。」
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