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5.夏が来た!「音楽の日」が始まる
スナックの席で、俺はポツリと呟いた。
「俺も焼きが回ったみたいだな。死んだ人に会うなんてよ。ほんと、この頃、おかしいんだよ。」
シュウちゃんは、真剣な顔でこちらを見て、
「それは、違うと思うな。洋子さんは、ずっと真知さんに作詞して欲しかったんですよ。それで、亡くなって魂になってこの世を離れる前に会いに来たんですよ。」
「うん。」
「しっかりしてください。これは、あなたが呆けたからじゃない。あなたがハートがある人だから、奇跡のような出来事が起こったんですよ、きっと。」
彼の熱い言葉に心を揺すぶられる。
「奇跡か。そういやあ、俺たち、70年代は様々な奇跡を起こしたもんな。」
「そうですよ。地方都市のなんてことない女の子を見つけて、磨いて、大化けさせたじゃないですか。」
「おう、そうだった。でも、奇跡が起こらなかった子もいたな、洋子みたいに。」
「だから、洋子さんは、今回、奇跡を起こしたんじゃないですか?」
「うん、そのとおりかもしれんね。君に言われて、少し元気が出たよ。」
「そうそう、その調子ですよ。もう一回やりましょうよ。」
「老体鞭打ってか。ははは。」
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