3.街道筋のドライブインで、俺は

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 気付いてみると、俺は病院のベッドの上だった。看護師さんに「今日、何曜日ですか?」と尋ねたら、怪訝そうな顔をして木曜日だと言う。日曜日の朝からずいぶん長い間眠っていたもんだと思っていたら、病院には昨日運ばれて来たらしい。  医者との面談で、「本当のことを全部言ってください。」とお願いすると、痴呆の初期段階だということを教えてくれた。3日ほどで退院はしたものの、家族からは車を取り上げられ、運転免許を自主返納させられた。娘は、友達のお父さんが車で出かけたまま帰らないので、捜索願を出したけど、まだ見つからないと私を脅かした。  妻からは徘徊も困るというので、首から名札をぶら下げるのだけは勘弁してくれって頼んで、GPS機能付きのスマホと名刺入れをポケットにいつも入れておくよう懇願された。「作詞家 真知 明」ってだけ書いた名刺持ってたって、最近の若いのは俺の歌なんて知らないんじゃないだろうか。  俺は心配になって、スマホの通話履歴を検索しNテレのディレクターに「歌の日」の企画が本当なのかどうか確認した。久しぶりのシュウちゃんとの仕事だから、絶対にやりたい。どうやら、こっちは大丈夫でホッとした。
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