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シュウちゃんが待ち合わせに指定してきたのは、ウェスティン・ホテルのザ・テラスで、ちょうどデザート・ブッフェをやっている時間帯だった。恵比寿だと俺ん家に近いから選んだのだろう。気の利く男だ。
シュウちゃんと俺の二人でよもやま話をして待っていると、前野曜子が、えっ!この間会ったのと違う前野曜子がやって来た。ちょっ、ちょっと待て。
「君が?曜子?」
「先生、お久しぶりです。嫌だ!そんなに私老けました?」
「じゃぁ、あの曜子は?」
俺の狼狽する様子を見て、曜子とシュウちゃんは顔を見合わせる。
「あのさ、俺、とんだ間違いしちまったらしいんだよ。老害だと思って赦してよ。」
二人は、少し不審な目をした後で、心配顔に変わっていく。
「シュウちゃん、前野さんと同じ頃にもう一人ヨウコっていたっけ?」
「柿沢洋子ちゃん。太平洋の洋の方。」とすかさず曜子が答える。
「そうか、その洋子から、作詞を頼まれたんだよ。この間。」と俺。
「そうだったんですね。話が変だなと思ったんだ。こっちの曜子ちゃんが真知さんからの電話で驚くわけだ。」
「ごめん、ごめん。」
二人は、無理をして笑ってくれた。
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