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「やたら見かける事が増えた気がする。今までお互い全然知らなかったのにね」
「それが、糸の力なの。だから、こうやって私を追いかけたり、話しかけたりしちゃだめなの。サッカーボールがぶつかりそうでも、私が怒ってても、無視しなくちゃいけないの。そうしないと、お互い好きな人と結ばれないよ?」
神妙な面持ちでそう言うと、花蜜は「好きな人か…」と呟いた。
「ちなみにさ、渡瀬さんの好きな人って誰?」
花乃子はうっ、と顔を赤くしてしまう。
「どうして言わないといけないの…?」
「や、興味本位とかじゃなくてさ。お互い知ってれば、協力しあえるかなぁって。無視したり避けたりするよりも、手っ取り早くない?」
花乃子はムムッと唇を噛んだ後、迷いながらも首を左右に振った。
「それは得策とは思えないよ。やっぱり一番は、関わらない事だと思う」
花蜜が残念そうに肩を落とす。
「そっか。折角いい友達になれそうだったのに」
花蜜がそう言った時だった。
「リン、こんな所で何してんの?早くしろよ」
「おー、愁。次、移動教室だっけ」
ハッとして廊下の先を見ると、こちらを不思議そうに見ている相澤愁がいた。
突然の登場に、花乃子の心臓がドキッと大きく跳ね上がる。
「あ、ああああああ、相澤君…!」
戸惑いに、思わずそう口走ってしまうと、近くにいた花蜜が「ん?」と首を傾げた。
「渡瀬さん、顔真っ赤だよ」
「な、なななな…!?」
花蜜は何かを感じ取ったのか、ニヤリとイタズラげに笑うと、向こうにいる相澤に手を上げた。
「愁、ちょっとこっちでお話しない?」
花蜜の提案に、花乃子はギョッと体ごと驚く。
「な、何を言って…」
相澤は怪訝な顔をした後、ようやく花乃子に視線を移した。
目が合い、花乃子の心臓がこれでもかと言うほどドキドキと脈打つ。
相澤はじぃっと花乃子を見つめた後、綺麗な目を細めてふっと笑った。
「あ、武士みたいなおにぎりの人」
「武士?」と花蜜が首を傾げる。
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