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「いやー、俺女子であんなデカいおにぎり持ってきてる子初めて見たよ。結構食うんだね。あ、もしかして何か部活やってるの?それなら納得…」
「帰宅部です!」
花乃子はそう叫ぶと、ふつふつと湧き上がる怒りを抑えながらドシドシと歩いて彼の元を去った。
(なんなのあの人、なんなの…!)
もちろん自分の間抜けさが一番腹立たしいのだが、彼のデリカシーのなさにも相当腹の立つものがあった。
どこに怒りをぶつければいいかわからず、貰ったキャラメルをギュッと握りしめて家路を急ぐ。
(人の顔にサッカーボールをぶつけといて、その上、からかって笑うなんて…!)
男子とは、ああ言う生き物だったと言う事を、久し振りに思い出した気がした。
弟に通じるものがあり、男子と言うのは小学生から特に何も変わらないのではと思ってげんなりする。
(あんなデリカシーのない子供みたいな人、すっごく苦手…!)
苛立ちながらも、空腹に負けたので、貰ったキャラメルの箱を開いた。
手のひらにコロンと二個のキャラメルが転がり出てくる。
(二個しか入ってない…)とガッカリしながらも、包み紙を開いて口に放り込んだ。
素朴なミルクの甘さが口いっぱいに広がって、怒りも徐々におさまってくる。
(……まぁいいか、今後関わる事はなさそうだし)
そう思って、キャラメルの箱をジャージのポケットに仕舞おうとした時だった。
左手に違和感を感じて、ふと目をやる。
「………え」
驚きのあまり、声が出た。
左手の薬指には白い糸が結ばれていて、ゆらゆらと揺れてどこか遠くの方へと伸びていたのだ。
「うそ………」
ドクンと心臓が凍りつく。
今まで、いつになったら自分にも糸が現れるのだろうと、どこか怖いもの見たさでワクワクとしていた所があったが、実際それを目の当たりにすると酷く動揺してしまった。
(どうして、今……?いつから…?)
胸が痛くなるほど心臓がドキドキとする。
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