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「なるほどね、俺と君は糸で結ばれてるけど、君には他に好きな人がいるから俺との縁を切りたいってわけね」
体育館裏の壁に寄りかかり、二人は並んで座っていた。
花蜜は特にバカにするでも信じないでもなく、すんなりと花乃子の話を受け入れてくれた。
そのことに、少なからず花乃子は驚いていた。
「その、いきなりこんな話してごめんなさい。信じられないかもしれないけど、私も、信じたくないんだけど……でも、これは事実で…」
並んで座ると、結ばれた糸はよくわかった。
今も糸は目の前でふよふよと漂っていて、花乃子と花蜜の小指を呑気に結び付けている。
知った時は愕然としてショックだったが、救いがあるのはまだ糸が白いことだ。
この場合、まだ強く結ばれてはいない証拠だ。
花蜜はハハッと笑った。
笑う顔が可愛くて、不覚にもキュンとしてしまう。
慌てて頭を左右に振り、ベシッと己の頬を叩いた。
(くそ…!これが糸の威力なのか…!?)
またも愕然とする花乃子に、花蜜が笑いながら言った。
「噂では知ってたからさ、この学校に運命の糸が見える女の子がいるって。まさか昨日サッカーボールぶつけた子とはね。しかも俺の運命の相手とか」
花乃子は慌てて言った。
「でも、まだ完璧に結ばれたわけじゃないから…!」
目を丸くする花蜜に、花乃子は続けた。
「糸はね、まだ白いから。赤くなっちゃうと、結ばれるけど、でも、私達のは、まだ可能性の段階だから…!」
「可能性…」
「だからね、協力して欲しいの。運命が私達を結び付けようとしてくるなら、そのフラグを全部叩きわってやろうと思うの…!そしたら、花蜜くんと私の縁もきっと切れるよ。ちなみに、うちの両親も切れちゃったから」
「あー、だから…」
「だから、お願いします…!」
花蜜は少しだけ考える素振りを見せたあと、あっけらかんと頷いた。
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