280人が本棚に入れています
本棚に追加
担任の言葉に、花乃子はハッと青ざめる。
「そ、そうです!」
「視聴覚室で説明会あるって言っただろー。早くしろ」
「すみません、今行きます!」
花乃子は慌てて机の上の筆箱を引っ掴むと、郁美に「ごめん、行ってくるね!」と言いおいて教室を飛び出した。
(わぁぁぁぁ、最悪だぁぁぁ、すっかり忘れてたぁぁぁぁ)
半泣きになりながら階段を駆け上がる。
急いで視聴覚室の扉を開けると、中では各々のクラスの代表者が静かに座っていて、教師による説明が既に始まっていた。
「あなた、何年何組?」
教師の厳しい視線に、ひぃっと背筋を凍らせながら、「はい!」と姿勢を正す。
「一年一組、渡瀬花乃子です!遅れて申し訳ありません!」
「はい、これオリエンテーションの冊子。空いてる所に適当に座ってくれる?」
「はい……!」
心の中で泣きながら、空いている席を探す。
後ろの窓際に空いている席を見つけて、花乃子は急いでそこに腰を下ろした。
長テーブルの上で冊子を広げ、小さくなりながら必死で読まれている項を探す。
すると、隣の誰かがクスッと笑った。
ハッとして隣を見ると、見覚えのある顔がそこにあった。
「関わらないようにって約束したのに、早速会っちゃったね」
ニッと曇りのない笑顔が眩しい。
それに反するように、花乃子は途端に真っ青になった。
「は、はははは花蜜くん……!?」
「もしかしてこれが糸の威力ってやつなの?やっぱり渡瀬さんの言ってる事ってほんとだったのな」
呑気に言う彼に愕然としながらも、花乃子はキッと花蜜を睨んだ。
「ほ、本当だって言ったでしょ。だから、すっごく勇気だして、あんなお願いしたんだよ…!」
「ごめんごめん、疑ってるつもりなかったけど、やっぱりはいそうですか、って、すんなり信じられないっつーかさ。でも大丈夫、約束は守るから」
花乃子はじっとりと彼を見つめる。
「そこうるさいよ」と教師の注意に、「すんませーん」と返しながら、花蜜は冊子に目を落とした。
(くそ、糸が引き合わせようとしている…!)
むしゃくしゃする思いで花乃子も冊子に目を落とす。
すると、花蜜が言った。
「あ、今4ページだから」
「あり…………は、話しかけないでくれるかな」
「なんで?」
「か、関わらないようにって言ったでしょ!?」
「あ、そっか」
最初のコメントを投稿しよう!