何度でも思い出せるなら

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「お母さんが孫の顔が見たいって家に来てね。面倒見ててあげるから、たまには二人で食事でもしてきたらって。それで、びっくりさせようと思って、会社の前で待ってるつもりだったんだけど、どの建物かわからなくてちょっと迷子になってたの。会えてよかったぁ。久しぶりに街に出るとわからなくなるね」  微笑む妻の顔は、最近いつも見ているようなすっぴんでは無かった。子どもが出来る前のように、きちんとメイクをしている。 「なにじっと見てるの?」 「いや、綺麗だなと思って」 「え!」  妻の顔が赤くなる。 「ちょっと! 最近そんなこと言わなかったくせに、いきなりそんなこと言われたら……、もう!」  照れたようにむくれる姿は、昔と全然変わらない。 「でも、嬉しい。たまにはこういうことしないと駄目だね。最近、ずっと生活に追われてるって感じだったし」  にっこりと妻が笑う。どうやら同じことを考えていたみたいだ。
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