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◇
胡蝶蘭に一本の電話が入って、マネージャーとして雇われているモトイが対応していた。
『いやごめんねー、いけるかなぁと思ったら気失っちゃって。迎えよこしてもらえねーかな。あーでもなんかぐったりしてるから救急車のほうがいい?』
呑気な声でとんでもない内容を話しているのは、レイの常連客である曽川という男だった。
「気失ってるって、どういう状況ですか」
モトイは慌てた口調で応じる
『どうって……、んー、脈も呼吸もあるしとりあえず生きてるよ』
「生きてるって、」
生きている、という言葉は同時に、死が決して離れたところにあるのではないということを感じさせた。
万が一というおそろしい予感のために、モトイは救急車を手配した。
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