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「カズキ、そのくらいにしといてやれよ。モトイだって悪気があってやってるわけじゃねーんだから」
と、横からモトイをかばったのは、胡蝶蘭の店長であるリイチという男だった。
年齢や本業、胡蝶蘭の店長になった経緯など、何もかも不詳だ。
店の回し方を見ていると、経営がうまいということはすぐにわかる。
しかしリイチ個人は胡蝶蘭という店がなくても金回りがよさそうで、儲けるためにやっているというふうには見えない。
「悪気がなかったらレイに何してもいいんですか、」
どうやらリイチの発言は火に油をそそいだようだった。
カズキの表情はますます不機嫌になって、声のトーンもさっきより一段階下がっている。
リイチは参ったなぁという感じで肩をすくめた。
モトイに出された助け舟は、モトイをのせずに引いていってしまう。
「カズキ、本当に、ごめ、」
言いかけたモトイを、カズキはきつく睥睨した。
「謝る相手はおれじゃない」
取り付く島もない。
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