叶わない夢

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学校の休み時間の他愛のないひそひそ話で終わるはずだった。だってそんなに上手くいくわけない。商売がそんなに簡単ならバブルも弾けなかったし、経済成長の低迷もなかったはず。 どこにでもいる女子高生二人が上手くもない絵と音楽で商売するなんて無理に決まってる。でも私と秋留は何か面白そうなことに飢えていた。バイト禁止の進学校だから、お小遣いは足りなくてもバイトで稼げない。 雑誌やテレビでは東京の女子高生が十万以上するブランドバッグを通学カバンにしている画像が載ってるけど、中途半端な地方都市に住む私たちには遠すぎる世界。そのバッグ普通のバイトで買ったの?それとも…。人に言えないような危ないバイトしてるんじゃない?意地悪な疑問が心に浮かぶ。 お金さえ手に入ればどんな仕事でも構わないって夢が無さすぎる。なんの取り柄もない凡人は大学に行って就活して社会人になる。それまでのモラトリアム期間くらい、全力投球して夢を追いかけてもいいじゃん?今しか挑戦出来ないことが山ほどあるのに、人に言えないよう後ろ暗い仕事とも言えない女を売り物にするような仕事はしたくない。 恋愛経験も、コクられ経験もない私の妬みかもしれないけど、女を売りにする怪しい仕事なんて不潔。私と秋留にしか出来ない夢の叶え方が絶対どこかにあるはず。 それは砂漠で一粒のダイヤモンドを探すような、確率が低い宝探しのような無謀なことかもしれない。でも、自分の心を傷つけるような仕事はしたくない。 私は「恋が叶うCD」の企画をノートに書きながらマーケティング戦略を練っていた。リビングに置いてあったお父さんのビジネス書『マーケティング入門』を悪戦苦闘しながら読んで、使えそうなところをノートに書き写す。 まずはクラスの中で勉強も恋愛も充実している子とさりげなく仲良くなること…。私は戦略ノートの最後のページに一人のクラスメイトの名前を書いた。 『天野三咲』
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