最後の夢

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私たちは放課後最寄りの警察署に行った。事件のおそれがあるときは管轄の警察署で合ってると思う。推理小説でそう読んだ記憶がある。 ろくに話も聞かずに追い返されると思っていたから、秋留と私が別々の部屋に案内されたときに、警察の本気を感じた。口裏を合わせたり、本当に自殺なのに私怨で誰かを犯人に仕立て上げていないか、その証言に信憑性があるか裏を取るために、私と秋留は別々に話を聞かれる。 もしかすると、すでにこの自殺が怪しいという証拠や証言が出てるのかもしれない。私は案内された部屋が取調室でないことにホッとした。小さな会議室のようなところに通されて、ゴツいゴリラのような年配の刑事さんらしき人と話す。 CCで送られた遺書メールで私と秋留を初めて呼び捨てにしたこと、天野家の家電話に掛けたときの「あなたたち」という不自然な三咲ちゃんのお母さんの話し方、知ってることは全部話した。刑事さんはメモを取り終えて、腕組みをしたままこう言った。 「オーディションについて天野三咲さんは何か言ってなかった?」 私はなにも知らないので知りませんと正直に答えた。でも、定期末テストの後に三咲ちゃんにオーディション受けたらと言ったら、ものすごい勢いでぶちギレて、自分のお茶代千円をテーブルに叩きつけて帰ってしまった話をした。     
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