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泣き濡れる優詩の頭上に降り注ぐように咆哮が響き、優詩は何事かと見上げると上空の雲を突き破り白竜の姿が現れた。
「えっ…しっ…?」
ヒューイかと確認する間も無く、何かが落ちてくる。優詩は突然の危機を前に為す術も無く、目をギュッと瞑り、頭を伏せることしか出来なかった。
あっという間の出来事だが、大きな衝撃音と共に川原の砂利と細かな砂が舞い、驚き身体を守るようにぎゅっと縮こまった身体にパチパチと小石が飛んで来て皮膚をかすめた。
涙も引っ込み、薄っすらと目を開けると、そこにはゆっくり膝をついて立ち上がるジェドの姿があった。
あんな川原の小石と砂利の上に落ちたのだ。痛いに決まっている!片手で胸を押さえ眉を寄せて痛みに堪えている表情に
「ジェド大丈夫っ?!」
と驚愕しつつも慌ててジェドに駆け寄った。
「怪我は?怪我は無い?足は……?」
視線を下ろして足は折れてはいないか慌てて確認するが、スラリと長い両足は思いの外しっかりと立っている。ジェドは反対に心配そうな優詩の腰にヒョイと手を回して引き寄せると、覗き込むように顔を近づけた。
そして、深い息を吐きながら気怠げに
「パパパパ…パム?」
と呟いた。まるで今まで息が浅かったのを取り戻すように深く息を吸った。
そっと右手で優詩の頤を持ち上げて、そのまま親指の腹で優詩の目元の涙の筋を拭う。
ひさびさに目を合わせると、ジェドの優しい眼差しと美しい瞳の色に心を震わされてジンと胸が痺れる。
ージェドだっ!ジェドだっ!
優詩はそのままジェドの胸にどしんと飛び込んだ。
勢いよく飛び込まれて少し驚くが、ジェドもギュッと抱き返した。
ジェドの体温を感じて心から安心した溜め息が漏れた。先ほどとは違った温かな涙が溢れてくる。
「どこ行ってたんだよ!心配するじゃないかっ!」
-会いたかったんだよ!寂しかったっ……!
だんだんと腹が立って遠慮なくジェドの肩口をバシバシと殴ってやった。
ジェドは全てを受け止めつつ、腕の中の少年が落ち着くのを嬉しそうに待つ。
大人しくなった事でやっと優詩の気が済んだのを感じて少し伸びた髪の頭上にキスをして耳元で囁いた。
そして、優詩はジェドに連れられてヒューイの背に乗りある場所まで連れて行かれた。
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