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力任せに振り解こうともがくが、アイツは涼しい顔でビクともせず、掴んだまま動じない。
「本当だって!ただ腹が痛いだけだ!…察しろよ!」
腹に手を当て涙目で訴えると、じっと俺を見据えてから
掴んでいた方の手の力を抜いた。
俺は腕を恨みがましく擦ってやる。
痛ぇんだよ!馬鹿力めっ!
レイオンはハァとため息をつくと、
「貴方も馬鹿ではありませんから分かって下さるとは思いますが、一度閉じた入り口は儀式が終わるまで開くことはありません。行っても無駄です。授る者となる王太子が張り巡らせた結界が入り口を封鎖するのです。花嫁をお迎えになられた後は見届けておられた両陛下や王子、司祭の方々がお戻りになると再び結界で入り口が閉じられます。次に王太子と花嫁が我々の前に現れるのは20日後になります。それまでの期間も同じく外からは一切開く事は出来ません。分かりましたか?今からあちらに向かったところで何一つ貴方の好奇心を満足させる様な物は無いのです」
もっと早く言えよ。俺は手品のネタバラシを知ってしまった様に段々と興味が薄れていくのを感じた。
俺の表情を見たレイオンは「本当に貴方は…」ともう一度深いため息を吐いた。
……なんだよ?
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