黄昏の召喚

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優詩は中学二年生の十四歳。少し前までは帰宅部で過ごしていたが、一念発起して野球部に途中入部したのだった。特に野球の才能があった訳でもなく、運動神経が良い訳でもなく、正直、運動は苦手な部類のタイプなので、途中入部したからと言って注目を集めるような部員ではなかった。見た目からして直ぐに辞めてしまうだろうとなかなか顧問から練習着を買わせて貰えず、一人体操服で練習に参加しているような初心者も初心者。入部してまだ三ヶ月。やっと許可がおりた練習着を着て基礎トレーニングと素振りとキャッチボールを主に行う毎日だった。 「応援も大事だよ。まだ始めたばかりなんだし、優詩君ならきっとすぐ活躍出来るよ! 」 と紗栄子は元気付ける。 「そうそう、今晩作るのはね、特製コロッケと豚汁なんだ~」 「やった!僕、紗栄子さんのコロッケ大好き!いっぱい食べたい!」 「優詩君、ダイエットはもう良いの?そういえばちょっと顔が小さくなったかな?野球始めたから身体締まって来た?」 優詩は小さな頃からずっと肥満児であった。食べる事に興味がある上、両親、二人の兄達の溺愛により食べたいものは何でも買ってもらい、好きなものを優先的に貰えて、好きなだけ食べていた。体格が良くなると「おっきいわね~。お兄ちゃん達と変わらないね!」と言う近所の人達の言葉をそのまま真に受けて、大好きな兄達と並んでいる気がして、最初は身長が伸びるだけだったがそのうち横に幅広くなる事についてはあまり気にしていなかった。身体が重いと外で遊ぶのも億劫になるし、もともとおっとりした性格の上、漫画やゲームで遊んで過ごすうちにクラスで一人か二人必ずいる肥満児の一人になっていた。     
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