266人が本棚に入れています
本棚に追加
俺を見ていると祖国を思い出すようで懐かしく、嬉しくて仕方ないらしい。4人の兄弟の中で一番甘やかして育てられた自覚はある。レイオンがいくら俺を躾けようとしても、結果は火を見るよりも明らかなのだ。
あの時、興味が薄れたのは本当だった。
それもレイオンが俺を解放するくらいに。
だが、俺は諦めが悪い。この国に俺が立ち入れない場所があるなんてあり得ない。授かる場所にも入ってやる。同じ王族で王子なのに生まれて来る順が最後だっただけで1人除け者にされた気持ちは分かるか?
このまま、はいそうですかと引き下がるなんて、俺の自尊心が許さないのだ。
この場所から授かる場所の外の警備の様子や前を通る侍従や教団の聖職者達の様子を観察していた。
「よもや中に入ろうとは思ってないよな?…俺達には関係のない神聖な場所だ。しかも警備にも万全を敷いている。そう易々と簡単に上手くいく訳がない事くらい分かっているだろ?しかも、王太子殿下が7年もの歳月を待って漸く叶った召喚の儀だ。ぶち壊す事にでもなったらどうするつもりだ。」
「………」
ベニートが言う全てが正論過ぎて言葉が出てこない。
無謀だと言う事は自分でも分かっている。
時折急に冷静になって、馬鹿な事をしている自覚はあった。
優雅なサロンにいてもずっと心は落ち着く事は無かった。
でも、行かないという選択肢は不思議と無い。
最初のコメントを投稿しよう!