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俺達は人通りの少ない廊下の曲がり角で待機しながらチャンスを待っていた。時折人が通り過ぎるが研究員の姿を怪しむ者はいなかった。そもそもこの変装作戦を考えたのは俺ではない。
『要は入り口を警備してる奴らにちゃんと仕事をさせたら良いって話だろ?』と最初は俺がベニートに今回の潜入計画を話した。
俺の作戦は簡単なもので、中庭に火竜を呼んで降ろし、ちょっと火を吹かせ、ちょっと植木を燃やして、警備兵を引きつけた隙に中にパッと入るというものだった。
「うん、それちょっとで済むかな?まず火竜は誰でも呼べないもんよね?呼べば来るのは陛下とジェドだけだから。そこからしてもうオカシイ上に足が付くし、いろんなトコから、いろんな鍛えてる人達や偉くて恐い人達までやって来ちゃうよね。もっと考えようか?」
「国有の火竜じゃなくて、野良の火竜が勝手に入って来るんだって」
と、抗議したが、
「野良の火竜が城内をうろつくなんて聞いたことないわ!」
そもそも保護指定の絶滅危惧種が野良ってあり得ないし!と一蹴された。深いため息をつくとベニートは俺の案を却下し、付いて来いと席を立った。
そして、今に至る。
この服装はベニートがどこからともなく用意して来た。
多分、研究所の人に借りたのだ。多分。深くは考えない事にした。
この格好は全身が隠れてしまう為、好都合だった。
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