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俺は覚悟を決めてゆっくりと振り返ろうとすると
「俺で、…私でしょうか?」
衛生管理者に捕まっていたのはベニートだった。
「そうだ!何度も言わせるな!お前はこれを研究室に持って行け」
押し付けられた白い袋は見た事がない素材だからきっと異世界のものだろう。
ベニートは白い袋が想像していない重さだった事に「重っ!」と、一瞬怯んだが赤児を抱えるように持ち直した。中には細かな粒がたくさん入っていてサラサラと形を変える。
「いや~、俺、私はこれから中に入るように言われておりまして…」
「こちらが最優先だ!感染の恐れがあるやも知れん。十分に気をつけて運べ」
ギョッとするベニートをそのままにして、俺は授かる場所の入り口をくぐる事にした。「ちょっ!待って!」と後ろから聞こえた様な気もする。
ベニート…感染にはくれぐれも気をつけてくれ。
俺だけでも行って来るわ!
ここに来てのベニートの運の無さに大笑いしたくて肩が震える。しかし、ぐっと我慢してゆっくりと地下に繋がる階段を下りていった。
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