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最終班と呼ばれた俺を含んだ四人で下りて行く。
降り切るとシットリとした空気をマスクから出ている皮膚で感じた。そこには人が二人すれ違える程度の幅しかない石畳の道があった。天井や壁も厚みのある石造りで全て出来ており、言い換えると人工的に掘った地下道を石で補強して覆っている様な感じだった。壁面には均等に照明が灯り薄暗い。ところどころ壁には染みた水の筋が伝い、床をじっとりと濡らしていた。
この城は建国時に築城された物で、湖上に隆起した岩盤に建っている。この湿度や水はその影響があるんだろうな。普段気にもしないこの城の歴史を肌で感じる。面白れぇー。
衛生管理局の人間以外にも、立会いに使われていたであろう椅子やグラスなどを運ぶ侍女達の集団とすれ違った。
道の行き止まりにはお目当ての空間が現れた。
ここが授かる場所…!!
歴代の王族の花嫁達を迎え入れる儀式が行われた此処は想像と違ってこじんまりとしていた。下手したら俺の衣装部屋よりも狭いかもしれない。二十人がやっと入るか入らないかの広さで、床は黒いタイルが敷き詰めてあって、浄化作用がある魔粒子がチラチラ光っている。そのせいかひんやりとした空気は澄んでいるようだった。
俺は興味津々で辺りを目だけ動かして観察する。
五角形の白い石壁に囲まれ、四面には巨大なタペストリーが吊るされている。
年季の入った厚みのあるタペストリーの一枚一枚には、物語のような男女の描写が植物だったり、獣だったり、子供といったものと一緒に織り込まれ意匠されていた。きっと意味があるだろうけど、俺には何も分からないし伝わらなかった。
床と壁の接地に沿って深めの溝が掘られていて水が流れている。辿ると壁にチョロチョロと水が出っ放しの蛇口と陶器の水受けがついていて、溝の水はそこから流れて来ている様だった。これは何の為にあるんだろう?
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