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最悪の出会い
授ける姿見は見る見るうちに本当に姿見程の大きさの靄の光に変わった。
“ジェデディアン…”
“サァ…ジェデディアン…”
そう呼びかける女の声は知るはずのない俺の真名を知っていて、それだけでもう信用できる。何故、“神に愛される”と言うその名を知っているのかなど聞くまでもない。
俺は迷う事なく姿見の中にゆっくりと手を差し入れる。
まだ儀式を行う年齢にも達していないというのに、王位継承権の無い俺が他の王子を差し置いて花嫁の召喚者として授ける姿見に選ばれた。その優越感と誇らしさが込み上げて来て全く怖くはなかった。
なるほど。やはり俺は特別で選ばれし者だった。こんなにもこの場所に固執したのは、ここで異世界から俺の花嫁を授かる事が運命だったせいなんだ。
全てが合致した事に勝手に口元が緩む。早く未だ見ぬ花嫁に会いたいと胸が熱くなる。
生暖かいムワッとする風の層みたいな気流を肌に感じる。目を閉じないと瞳が乾きそうでギュッと瞼を閉じる。額にかかっていた前髪も横の髪もすでに風圧で逆立っていた。しばらく手を動かしてみると何かに指先が触れた。
【見つけた】と直感する。
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