最悪の出会い

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俺はそのままグイッと手繰り寄せようと掴んだ。まだ見えてはいないが逃げようと動く花嫁の腕らしき所をしっかり左手で掴み引っ張った。 (何…?) その腕は思っていた以上にみっしりと固かった。 俺は一瞬気を取られ、バランスを崩した。 ゴツッ!ズサッ、ドサッという鈍い音と一緒に身体に衝撃が起きる。 「…痛ぁっ~!」 「…ッッ!うぅ~~っ…痛ってぇ…」 受け身を失敗して倒れこみ、反動で思い切り顎と唇をぶつけた。痛すぎて悶絶する。顎を押さえ圧迫して痛みを逃すが全く効かない、痛すぎる!それも運悪く、下の前歯が唇の柔らかい内側の肉に当たりそこをぶつけて切れてしまっていた。舌を噛まなかっただけマシだが口の中で鉄の味が広がる。 クソッ!シンジンと痺れてきやがった。唇の端を拭い、ペッと血混じりの唾を吐き出した。 俺の自慢の唇が…この後、絶対に絶対に腫れ上がるだろう! しかも、拭った手を見ると唾の混ざっていない血で濡れていた。靄の光に照らされ血の色もよく見えた。唇の左端の傷は何か硬い物で引っ掛けて切れていたのだ。 信じられない。生まれてこの方一度も怪我をした事の無い俺の顔に傷がつくなんて!けれども、それ以上に信じられない事が目の前に起きている。     
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