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悪いのはあの女だ。あの女が招いた惨劇なんだ。
こんな結果になるなんて思ってもいなかった。
花嫁ではなくこんな奴が出てきたのは俺が召喚に失敗したんじゃなくて、あの女に唆され、騙されたんだ!
俺は絶対に悪くない!
帽子を振り上げるとあいつの元に投げ返してやった。
すると、顔には当てていないのに大袈裟に目を瞑り、両腕で頭を庇い身構え出した。
小刻みに震え、怯え泣くあいつの姿を見て居られずこの場を離れた。
出口の絹幕を捲り授かる場所から逃げた。
忘れて無かった事にしたかった。
俺は一刻も早くこの場に居たくなくて走り出した。
入り口から飛び出すと、漸く見知った廊下まで出た俺はホッと息をついた。外に面した窓から見える中庭は黄昏色に染まっていた。
今度は瞬間移動して逆戻りしなかった。周りを見渡しても誰もいなく、危惧していた兵士の姿も無かった。
誰にも会わない事を願いつつ文字通り逃げる様に宮殿を目指した。
大切に育てようと箱に入れて忘れてしまった虫の様に。この自分の行いが罪の無い者を閉じ込めてしまうという、悲惨で残酷な状況を作り出してしまった事に気付きもしなかった。
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