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箱の中の虫
箱に数匹の虫が入っている。
虫の大きさはバラバラで、箱の中に敷き詰めているのは、一輪で赤と白と紫の三色の組み合わせが華やかな色合いを持つパチュラムの花だ。
その虫は一本角を持ち、金色に輝く硬い殻の中に柔な羽根を閉まっていた。とても大人しく、ゆっくりとした動作をしている
『鉱虫は媒介虫としてパチュラムの花に集まります。ほら、よく見て下さい。甲虫類の為、固い外殻を持っておりますが、内側の尻に近い部分に薄い袋状の膜がついています。…見えますか?』
美しく繊細な見た目のレイオンだが、手のひらより小さめの鉱虫を無造作に掴みひっくり返し腹を見せる。イヤイヤをする様に6本の手が動く。
『…見えた!この袋はなあに?』
『この袋は魔素で出来てます。鉱虫はパチュラムの蜜を吸う代りに花びらを食べて魔石を作り出すのです。鉱石虫に魔力で魔素を融合させて交配したのがこれらの鉱虫です。あなたのお祖父様のお祖父様のずっと前のお祖父様がこの虫を作ったのです』
『へぇ。』と幼いジェドは呟くと熱心に鉱虫の観察を続ける。
その袋には少しだけ白味がかった液体が入っていた。
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