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第二話 変化
金曜日。曇天なのが幸いだ、と言いたいところだが気温よりも湿度が勝って不快感は強い。救いなのは学校に行けばエアコンの付いた教室が待っているってことだな。
登校はいつもの如くみのりと一緒に。十五年も一緒にいれば、会話も少ない。
横並びで俺と同じ背丈なのはやはり女子の中では大きいんだろう。だからこそ目立つし、性格の明るさと顔の良さも相俟って、伊調みのりは人気者だ。俺と違って。
多くの同級生と挨拶を交わすみのりと別れて教室に入るとまだ冷え切っていない空気の生温さを感じた。
椅子に腰を下ろして一息吐けば、あとから入ってきた糸目金髪が近寄ってきた。
「誰が糸目だ」
「はっは。どうしたんだ、若」
ワイシャツの中に着込んでいる色シャツが目立つ。
「あ~、いや……やっぱ部活には来ねぇのかなって」
「珍しいな、若がそういうこと言うの。別に俺がいなくてもメンバーは足りてるし成り立っているだろ? 俺は必要ない」
「そうか……まぁ、そう言われるだろうと思っていたよ。でも、勿体ないだろう? お前の技術は――」
言葉を遮って呆れたように溜め息を吐くと若は口を噤んだ。
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